東京高等裁判所 昭和63年(行ケ)89号 判決
一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本件発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。
1 成立に争いのない甲第二号証の一、二によれば、本件発明の技術的課題(目的)、構成、作用効果は、次のとおりであることが認められる。
(一) 本件発明は、米菓の製造方法、特に膨化を施す方法の改良に関する(本件発明の特許出願公告公報(以下「本件公報」という。)第一欄第二〇行、第二一行)。
煎餅、おかき、あられ等の粳米、糯米を主原料とした米菓は、米を蒸煮粉砕、捏和することにより粘調性の均一な生地にし、これを所定の形状、大きさに裁断して成型後乾燥し、加熱して膨化させることにより製造されているところ、この加熱膨化の手段とし、a 伝熱、ガス燃焼熱、赤外線等を用いる方法は、生地の外側だけが焼けて膨化し、内部に空洞が生じたり、全体的に膨化率を大きくできない欠点があり、b 予備乾燥の後高周波加熱によつて処理する方法(例えば第三引用例記載のもの)は、生地の内部から十分膨化が行えても、<1>生地が膨化する過程で均一にふくらまず、弓状に曲がつたり、一部分のみが極端にふくらんで変形が大きく、品質を低下させやすい、<2>このため生地を上下から押さえるようにして高周波を加えなければならず、装置が複雑化し、また大量生産に適しない、<3>内部から加熱が進行するので、水分の蒸発が激しく急速に硬化してしまい、品質上好ましくない製品になりやすい、という欠点があつた(第一欄第二二行ないし第二欄第一四行)。
本件発明は、従来技術における前記諸欠点をなくし、良好な品質と量産に適する膨化処理工程を含む米菓の製造方法を提供することを技術的課題(目的)とするものである(本件公報第二欄第一五行ないし第一七行)。
(二) 本件発明は、前記技術的課題を達成するため、特許請求の範囲(本件発明の要旨)記載の構成(本件公報の補正公報第九行ないし第一一行)を採用したものであつて、加熱膨化の手段としてマイクロ波を用いて粳米、糯米を主原料とした米菓を製造するに当たり、まず生地に外部加熱を行つてその表面部に薄い皮を形成し、しかる後にマイクロ波加熱をして生地を膨化させる米菓の製造方法である(本件公報第三欄第六行ないし第一一行)。
そして、本件発明において生地の表面部に薄い皮を形成する技術的意義は、「生地の内部は水分が表面の薄い皮によつて蒸発が抑制されて内部にこもり、これにマイクロ波照射させるとこの水分のためにマイクロ波吸収性が増し、極めて効率よく内部からの生地が軟化し膨化が行なわれ、生地の全体に均一な膨化がゆきわたる」(本件公報第三欄第一一行ないし第一六行)ようにすることにある。
(三) 本件発明は、前記構成を採用したことにより、<1>生地全体に膨化がゆきわたる、<2>水分が成品中にほとんど残らないので品質を低下させることがない、<3>マイクロ波の吸収性がよいためマイクロ波電力が低くてもよく、経済的である、<4>マイクロ波加熱前に表面部をある程度膨化してあるため生地が曲がつたり、局部的に膨出したりする変形を生じない、<5>このため生地を機械的に押さえたりすることが不要で大量生産に適する、<6>生地が厚いものでも、均一な膨化が行われ、内部に空洞が生じたりすることが少なく良好な品質が得られる(本件公報第三欄第一一行ないし第四欄第二行)という作用効果を生じる。
2 原告は、本件発明は、第一引用例、第二引用例、第三引用例記載のものに基づいて、又は第四引用例記載のものに基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるのに、審決は、右各引用例記載の技術内容を誤認した結果、請求人の主張する理由及び提示した証拠によつては本件特許を無効にすることはできない、と誤つて判断したものであるから、違法である旨主張するので、まず本件発明は、第一引用例、第二引用例、第三引用例記載のものに基づいて当業者が容易に発明することができたものであるかについて検討する。
成立に争いのない甲第三号証によれば、第一引用例記載のものは、粳米を原料としてひびわれ煎餅を製造する方法に関するものであり、ひびわれを繊細かつ深くし、その表皮に剥離部分が発生することを防止し、歯切れがよく、歩留をよくすること等を目的とし、この目的のために四段階の加熱処理工程を設け、含水量九%~一〇%程度に調節し油脂を付着した乾燥生地を、第一釜で一九〇度C一分三〇秒ニクロム線により加熱し、第二釜で一二〇度C一分三〇秒赤外線により加熱し、第三釜で三一〇度C一分三〇秒遠赤外線により加熱し、第四釜で二四〇度C二分ニクロム線により加熱し、このように焼成温度及び時間を順次変えて連続的に焼成するものであることが認められる。そして、前掲甲第三号証によれば、第一引用例記載のものにおける第一釜での目的について、第一引用例には「第一釜にあつては生地の温度を徐々に上昇せしめることを目的とするものである」(第一頁右欄末行ないし第二頁第二行)と記載されているだけであつて、薄い皮を生地の表面部に形成することについての記載はなく、その点の認識も存しないことが認められ、その記載からは一九〇度C一分三〇秒の外部加熱により薄い皮が形成できるか明らかではない。
また、成立に争いのない甲第四号証によれば、第二引用例記載のものは手焼風の硬焼き煎餅を連続的に製造する装置に関するものであつて、従来の機械化された煎餅焼成機は、長い連続した焼成釜を通過するエンドレス金網上に生地を載置させ連続して焼成するものであるから、ぶくが生じるため製品の不均一を生じ、一方、手焼きの場合は、ぶくが出そうになると網ごと火から取り出し少しさまして火にかざすという操作を繰り返し、さらに瓦で押し伸ばして徐々に膨嵩させて平らな硬焼き煎餅を焼成する方法が採られていたとの知見に基づき、手焼きにおける風入れ処理を機械的に具現するため特許請求の範囲記載の構成、すなわち「数個のトンネル釜を間隔をあけて進行方向に直線的に設け之を連続して通過する金網ベルトを設けた一次加熱炉装置と上下に張設した弾力性のあるスチールベルトの間に前記一次加熱炉装置より出て来た原料を受けつぎ之を挾持し運行しながら焼成する挾み焼装置と更に色付け釜による色付装置とを連続して設け且つ一次加熱炉装置の金網ベルトの先端を先細になしこのベルト端を下部スチールベルト面に張出重ね合せ下方に設けた駆動用のエンドドラムとストレツチロールとで金網ベルトを間接的に張支駆動せしめる原料移乗装置を有することを特徴とした煎餅焼成装置」(第四欄第二五行ないし第三六行)を採用したものであることが認められる。
右認定事実によれば、第二引用例記載のものにおける一次加熱炉装置は予備加熱釜であり、二次加熱炉装置(挟み焼装置)は膨化釜であると推認することができるが、前掲甲第四号証を検討しても、本件発明における生地の表面部に薄い皮を形成することについては何らの記載も示唆も存しない。
さらに、第三引用例記載のものは、前記1認定のとおり本件明細書に改良すべき従来技術として記載されているものであつて、成立に争いのない甲第五号証によれば、第三引用例は、「膨化せる煎餅」の製造方法の発明に関し、その特許請求の範囲には、「膨化せる米菓の主原料として米穀を水の存在下において加熱、粉砕、捏和してα化度六〇%以上の粘調性均一質物とし、これを適宜大に成型した後、予備乾燥を行い、水分一〇~二二%とし、次いでこの予備乾燥物を高周波加熱にて内部より加熱、膨化させ水分三%以下になるまで加熱することを特徴とする膨化せる米菓の製造法」(第四欄第二二行ないし第二八行)であると記載されていることが認められる。
右認定事実によれば、第三引用例記載のものは、マイクロ波加熱を行つて生地を膨化させる米菓の製造方法であるが、前記1認定の<1>ないし<3>の欠点を有するものであり、生地表面部に薄い皮を形成してこの欠点を解消する技術について何ら示唆するものではない。
以上の認定事実によれば、本件発明は、「米穀を粘調性均一質物とし、成型、乾燥した生地に外部加熱を行つてその表面部に薄い皮を形成し、この外部加熱に引き続いてマイクロ波加熱を行い生地を膨化させる米菓の製造方法」を要旨とするものであるが、第一引用例及び第二引用例記載のものは、「生地に外部加熱を行う」ものであつても、「その表面部に薄い皮を形成」するものとは認められず、これに第三引用例記載のものを適用しても本件発明の構成を得ることはできない。
もつとも、本件発明の原料(米)と第一引用例記載のものの原料(粳米)とは同一であり、前掲甲第二号証の一によれば、本件明細書の実施例に記載された生地に薄い皮を形成させる外部加熱の条件は、加熱温度二八五度C加熱時間五〇秒であること(本件公報第二欄第二五行ないし第三〇行)が認められ、これを第一引用例記載のものの第一釜における加熱条件である加熱温度一九〇度C加熱時間一分三〇秒と対比すると、第一引用例記載のものにおいても生地の表面部に薄い皮が形成されていないとは断定できない。
しかしながら、本件発明の要旨とする生地の表面部に薄い皮を形成することの技術的意義は、「生地の内部は水分が表面の薄い皮によつて蒸発が抑制されて内部にこもり、これにマイクロ波照射させるとこの水分のためにマイクロ波吸収性が増し、極めて効率よく内部からの生地が軟化し膨化が行なわれ、生地の全体に均一な膨化がゆきわたる」ことにあることは前述のとおりであり、単に薄い皮を形成すれば足りるものではない。しかも、第一引用例及び第二引用例記載のものの技術的課題(目的)は、前述のとおり本件発明と明らかに相違しており、従来技術、殊に膨化加熱手段としてマイクロ波加熱を用いる技術の改良のためにマイクロ波加熱前の段階で生地に外部加熱を行つてその表面部に薄い皮を形成するという本件発明の技術的思想を全く欠如しているものであつて、この第一引用例及び第二引用例記載のものに第三引用例記載のものを組み合わせて本件発明を得ることは、当業者が容易に想到できることではない。
この点に関し、原告は、第一引用例に記載された第一釜の処理温度一九〇度C加熱時間一分三〇秒は薄い皮が形成できる範囲内にあり、このことは、甲第七号証、第八号証、第一〇号証の記載事項から明らかである旨主張する。
しかしながら、第一引用例記載のものにおいて、必ず生地の表面部に薄い皮が形成されているといえないことは前述のとおりであり、また、成立に争いのない甲第七号証、第八号証、第一〇号証によれば、右各報告書には、いずれも粳米等を原料とした生地に予備加熱を加えた結果薄い皮が観察された旨の記載が存するが、その条件(一三〇~一六五度C約四分、約二三〇度C約三分、一七〇~一八五度C約四分等)は、第一引用例記載のものの第一釜の前記条件と同一でないから、このことから原告の主張を裏付けることはできない。仮に、第一引用例記載のものにおいて生地の表面部に薄い皮が形成されているとしても、前掲甲第三号証によれば、第一引用例記載のものでは、第一釜での生地の表面部の薄い皮は、これに続く第二釜以降での加熱膨化時にひびわれが生じるものであり、本件発明のような薄い皮の形成を意図したものでなく、むしろ、「ひびわれを繊細かつ深く」(第一頁右欄第七行、第八行)との記載からみると、そこに形成される薄い皮は、本件発明の薄い皮とは性質を異にするものと認められる。したがつて、原告の前記主張は採用できない。
また、原告は、従来煎餅生地の加熱膨化に際し、予備加熱と加熱膨化は一般にセツトとして行われており、マイクロ波加熱によれば厚手の煎餅生地でも均一膨化できる技術が公知であつたから、外熱加熱による膨化方法に代えて、均一膨化の特質を有するマイクロ波加熱方法を採用することは、当業者において何ら困難なことではない旨主張する。
しかしながら、第一引用例及び第二引用例記載のものは、生地を予備加熱し、これに続く加熱膨化をセツトで行うものであつても、その技術的課題(目的)は、前述のとおり本件発明と明らかに相違しており、本件発明における従来技術、殊に膨化加熱手段としてマイクロ波加熱を用いる技術の改良のためにマイクロ波加熱前の段階で生地に外部加熱を行つてその表面部に薄い皮を形成するという技術的思想を全く欠如しているものであるから、この点について、「本件発明は、生地の内部の水分をその内部にこもらせ、水分の蒸発を抑制することを目的としており、第一引用例のひびわれ煎餅のひびわれを繊細かつ深くすることを目的としたものではなく、第一引用例ないし第三引用例は、第一引用例とし第三引用例とを結びつけることを何も教えていない」とした審決の判断に誤りはなく、原告の前記主張は理由がない。
3 次に、本件発明は第四引用例記載のものに基づいて当業者が容易に発明することができたかについて判断する。
成立に争いのない甲第六号証によれば、第四引用例は、露木英男、首藤醇共同執筆に係る「澱粉質食品の発泡乾燥(その一)」と題する技術論文であつて、「澱粉質食品の発泡乾燥の原理」の項には、穀類、イモ類等のうち、澱粉を多量に含有するもの、又はこれらの粉類を加水加熱してα化した後成型し、予備乾燥をした後伝熱媒体と混合撹拌しつつマイクロ波加熱を行つて発泡膨張させ、急速乾燥をすることにより、長期保存に耐え得る即席食品又は菓子類を作ることができる(第八三頁左欄第二行ないし第八行)との記載があり、「実験および結果」の項には、この知見に基づいて行つた実験及びその結果が示されているが、この実験―Ⅰないし実験―Ⅳでは、すべて馬鈴薯澱粉を主成分とした試料が用いられ、穀類については、わずかに実験―Ⅱにおいて糯米が副成分(一五・六%)として用いられているにすぎないこと(第八五頁右欄第5図下第九行ないし第八七頁右欄第四二行)が認められる。また、前掲甲第六号証を検討しても、第四引用例には、実験の対象とした生地の表面部に薄い皮を形成することについて何ら記載されていないことが認められる。
右認定の記載事項に基づいて、第四引用例記載のものと本件発明とを対比すると、第四引用例記載のものは生地を伝熱媒体と混合撹拌しつつマイクロ波加熱を行つて発泡膨張させるものであるのに対し、本件発明はマイクロ波加熱をする前にまず外部加熱により生地の表面部に薄い皮を形成し、これに続くマイクロ波加熱により膨化を均等に行わせるものである点で相違し、かつ、第四引用例記載のものは馬鈴薯澱粉を主原料とするのに対し、本件発明は米穀を主原料とする点で相違する。
したがつて、本件発明は第四引用例記載のものに基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
この点について、原告は、第四引用例には、「試料番号1―2は媒体温度一六〇度C、マイクロ波加熱時間二〇秒、試料2―2や試料3―2も同じく三〇秒で仕上げた」(第八七頁右欄第三行、第四行)と明記されているから、実験―Ⅰで用いたマイクロ波加熱のガラス円筒と同一の長さの五〇cmステンレス円筒における予備加熱時間は、試料番号1―2で二〇秒、試料番号2―2で三〇秒、試料番号3―2も三〇秒ということになり、これらの試料の体積は極めて小さいから、第四引用例記載のものは短時間の外熱加熱で生地の表面に薄い皮を形成できたと推定できる旨主張する。
前掲甲第六号証によれば、第四引用例には、実験―Ⅰで用いた装置について、「内径二〇cmのステンレス円筒の入口から五〇cmの位置で、長さ五〇cmの耐熱ガラス円筒と連結し、さらに長さ一五〇cmのステンレス製円筒と連結して、計二五〇cmの長さの円筒とし、この耐熱ガラス円筒よりマイクロ波を印加するようにした。」(第八五頁右欄第5図下第二八行ないし第八六頁左欄第6図下第五行)と記載されていることが認められ、この記載によると、右装置の入口から耐熱ガラス円筒の連結部までのステンレス製円筒の長さ五〇cmは、全長二五〇cm中の五分の一に相当する。一方、前掲甲第六号証によると、実験―Ⅰの装置における「マイクロ波加熱装置は出力二・五KW、周波数二四五〇MC」(第八五頁右欄第5図下第二七行、第二八行)と記載され、その試料番号1―2、試料番号2―2及び試料番号3―2は、伝熱媒体(岩塩を粉砕した粗粒塩化ナトリウム)による加熱とマイクロ波加熱とを併用した場合であり、第1表(別表参照)に、媒体温度はともに一六〇度C、加熱時間はそれぞれ二〇秒、三〇秒、三〇秒と記載されており、右加熱時間は第四引用例の記載事項からみてマイクロ波加熱直前の媒体加熱温度一六〇度Cをも含めた時間と解するのが合理的であると認められるから、試料番号1―2、試料番号2―2及び試料番号3―2が装置の入口から耐熱ガラス円筒の連結部までのステンレス製円筒部で加熱された時間は、それぞれ約四秒、約六秒、約六秒であると計算される(成立に争いのない甲第一四号証を検討しても、右認定を動かすことはできない。)。そうであれば、生地の体積の計算が原告主張のとおりであるとしても、このような短時間伝熱媒体(温度一六〇度C)で加熱することにより生地の表面部に薄い皮が形成されないことは、技術的に自明であり、原告の前記主張は採用できない。
また、原告は、第四引用例記載のものは、馬鈴薯澱粉を主原料とし、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉等を混合した物を使用しているが、澱粉は、アミロペクチンとアミロースとから成り、その含有量の比率差により性質を異にするところ、アミロペクチン含量において、粳米とタピオカ澱粉及び馬鈴薯澱粉がほぼ等しく、糯米とワキシーコーンスターチがほぼ等しいから、外熱予備加熱とマイクロ波加熱の結合による膨化に関する挙動も本件発明と大差ないと判断するのが相当である旨主張する。
成立に争いのない乙第七号証によれば、「食品科学大事典」(株式会社講談社昭和五六年一一月一八日発行)には、澱粉について、次の事項が記載されていることが認められる。
(一) 澱粉は、アミロースとアミロペクチンとから成る。アミロースには、約一〇〇グルコース単位から一〇〇〇グルコース単位以上まで種々の大きさのものがあり、アミロペクチンはその三倍以上の大きさである。澱粉果粒中に存在する両型の分子の大きさと量によつて、個々の澱粉の性質が決定される(第四七七頁右欄第一〇行ないし第二〇行)。
(二) 澱粉は、トウモロコシ、コムギ、コメ等から得られる。澱粉は白色粉末であり、肉眼では植物間の差異を認めることはできないが、顕微鏡下では、澱粉は細胞状あるいは果粒状等Fig1に示すように植物により異なつた形状を見せている(同頁左欄第二六行ないし右欄第一行)。
(三) 「Fig1デンプン果粒の顕微鏡写真」によると、ジヤガイモの場合は巨大な果粒を示しているのに対し、米の場合は微小な果粒を示している。
右記載事項によれば、澱粉は、アミロースとアミロペクチンとから成るものであるが、アミロースには種々の大きさのものがあり、アミロペクチンはその三倍以上の大きさであるところ、澱粉果粒中に存在する両型の分子の大きさと量によつて、個々の澱粉の性質が決定され、また、澱粉は、顕微鏡下では細胞状あるいは果粒状等植物により異なつた形状を示すことが認められる(乙第七号証は、本件出願後の刊行物であるが、澱粉の性質等前記認定事項について本件発明の容易推考性を判断する資料とすることは、その技術内容からみて何ら差し支えない。)。
したがつて、米澱粉と馬鈴薯澱粉とは、アミロースとアミロペクチンとから成るものであつても、その性質、形状を異にすることが明らかであり、また、その加工に際して、薄い皮の形成の有無、その皮の状態(性質・形状)、加熱膨化時における均一膨化の挙動を自ら異にすると解するのが自然であつて、原告の前記主張は採用できない。
4 以上のとおりであるから、本件発明は、第一引用例ないし第三引用例記載のもの、又は第四引用例記載のものに基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえないから、原告の主張する理由及び提示した証拠によつては本件特許を無効とすることはできないとした審決の認定、判断は正当であつて、審決に原告主張の違法は存しない。
三 よつて、審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却する。
〔編注1〕本件発明の要旨は左のとおりである。
米穀を粘調性均一質物とし、成型、乾燥した生地に外部加熱を行つてその表面部に薄い皮を形成し、この外部加熱に引き続いてマイクロ波加熱を行い生地を膨化させる米菓の製造方法